生きものたち(3)

わたしはよく山に行ってテントを張ったり、野宿をしたりするのですが、
そんなときの大きなよろこびは、生きものたちに出会えることです。

これまでにいろんな出会いがありましたが、
その中から、おもしろいエピソードをふたつご紹介します。

あるとき一番高い峰の上で、
テントも張らず、寝袋だけであお向けになって寝ていると、
不思議なことが起こりました。

朝のはやい時間でしたが、
わたしの額の上に何かがちょこんと乗ったような気がして目を覚ますと、
シジュウカラという小鳥が、たしかに額の上にいるのです。

「いったい何をしているんだろう?」と思いながらじっとしていると、
わたしの髪の毛をくちばしで引っぱっては飛んでいき、
また戻ってきては引っぱりと、同じことを繰り返すのです。

もしヒゲを引っぱりにきたら口でパクッとつかまえてやろうと思っていましたが、
ヒゲの方には全然やってきませんでした。

そのシジュウカラはきっと、自分の巣の材料に
わたしの髪の毛がちょうどいいと思ったのでしょうね。
それにしても、どうしてヒゲの方に来なかったのか、ちょっと不思議です。





何日も泊りがけで山に入っていたときのことです。

自分の食料として生きたチャボをテントの近くの木につないでいたのですが、
それが何ものかに襲われてしまったのです。

沢の近くにテントを張っていたので、犯人はイタチかテンだろうと思っていました。
ところが次の日、わたしがテントの前にいると、
タヌキのつがいが山の斜面をトコトコと降りてきたのです。

チャボを殺したのは彼らにちがいありません。

わたしは怒っていましたので、
そのタヌキ夫婦をつかまえて、本気でタヌキ汁をつくってやろうと思いました。

そこで、彼らをおびき寄せるためにテントの近くに残飯をばらまいたところ、
夕方になると決まった時間に姿を見せるようになったのです。

タヌキたちはだんだんなついてきました。
そしてついに、鍋に入った残飯を差し出すと、
その鍋に首をつっこんで食べるようになったのです。
もう、つかまえようと思えば簡単につかまえられる状態でした。

しかし餌付けするまで1週間もの間、毎日夫婦でやって来る姿を見ていると、
なんだかタヌキ汁にするのはかわいそうになって、そのまま山を下りました。


2001年12月12日
松原英俊

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