生きものたち(2)

田麦俣はいま、山々の色鮮やかな紅葉に染まっています。

厳しい冬を前にした、ほんのひとときの美しい季節です。
ちょっと山に入ると、木の実やキノコがそこかしこにあって、
長い冬を耐えていく生きものたちを手招きしているようです。
実りの秋は、冬のためにあるのでしょうか。


鷹の訓練をはじめる時期が近づいてきました。
わたしは3年前からイヌワシも扱っていますが、
基本的にはクマタカを使って狩りをします。

クマタカは鷹の中でいちばん大きな種類で、
獲物は大体ウサギですが、大きいものではタヌキやキツネまで獲物にします。

鷹の武器は、まず目が非常にいいことです。
だいたい人間が8倍の双眼鏡で見たのと同じくらい目がいいといわれています。
その目で2km先の獲物まで判別して飛んでいくわけです。

あるとき山で鷹狩りをしていると、
当然クマタカがわたしより早く獲物を発見して急降下していきました。
わたしがその後を追いかけてみますと、
雪の斜面のブナの根元に雪穴があって、クマタカがしきりに覗いているのです。




おそらく雪穴に何か生きものを追い込んだのだろうと思い、
わたしはその雪穴に体ごと入り、手を奥の方まで伸ばしてみました。
すると何か生きものがわたしの手の甲にガブッとかみついてきたのです。

すごく痛くて悲鳴を上げそうになりましたが、
それでも離さずに無理やり引きずり出したのですが、
その生きものは何だと思いますか。

それはリスだったのです。
クマタカは、小さなリスの一瞬の動きを見逃さなかったのです。



このように鷹の目は素晴らしくいいのですが、
その他の武器としては、ツメがあります。
鷹のツメは鋭くて、クマタカの場合、長いところで5cm位あります。




それに握力は成人男子と同じくらい強いのです。
わたしはこのツメで失明しそうになったことがあります。
鷹はお腹がいっぱいだと決して獲物に飛びかかりませんから
鷹の訓練は空腹状態にして行わなければなりません。

ある日エサを与えようとして鷹小屋の戸を開けた瞬間、
鷹がエサ欲しさにわたしに向かって飛んできたのです。

わたしは小屋の中でエサをやろうと頭から入っていったので
まともに鷹のツメが顔面を捕らえて、両足でわしづかみにされてしまったのです。

わたしは一瞬失明したと思いました。
しかし幸いにも(?)ツメは眼球の5mm上のまぶたに突き刺さっていたのでした。



2001年11月2日
松原英俊

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